四季のボタニカルアート[botanical art]

監修:正山征洋

ボタニカルアートとは植物細密画(草花を科学的に精密に描出する)
「花の肖像画」とも言われるほど、植物の正確性と芸術性を持ち合わせたアートです。
元は、世界各地で採集された植物の標本画として精密に描かれてきたのが最初です。
最近では、写真などの技術が進歩してきていますが、人の心を魅了するジャンルとして有名になってきました。



  
ボ ケ

 バラ科に属する落葉性低木で、春早くピンク、赤、白等の花を開きます。夏の終わりから秋にかけて果実が黄熟します。香りは良いのですが、かじると渋くて酸っぱくて食べる事は出来ません。焼酎漬けにすると香りの良いリキュールが出来上がります。咳が続く時咳止めとして効果を発揮します。
 本画はマウンドにより手彩色された
1700年代中期の作品です。




セイヨウボダイジュ(シナノキ科)


落葉性高木で、初夏に葉の付け根に長い柄と翼をつけた絵に見るようなユニークな形をした淡黄色の花穂がぶら下がります。
ヨーロッパで「リンデンバウム」として親しまれている樹木です。
花と葉は鎮静作用があり、不安神経症・不安症等による不眠によく用いられます。また、動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞等の予防にも用いられます。
本戒壇院の菩提樹は中国原産の学名がTilia miquelianaで、ヨーロッパの種とは異なります。
また、お釈迦様が悟りを開かれた菩提樹はクワ科植物で熱帯にしか育たず、戒壇院の菩提樹とは全く別物です。



  ニンニク

 ニンニクは野菜・スパイスとして食卓にのぼりますが、薬草としての役目も果たしてきました。
「葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず」と禅寺の門に碑が立っていますが、葷に相当するのがニンニクやニラで、強いにおいを発し、かつ強精強壮作用があり修行の妨げになるため御法度になっていました。
 ニンニクの効能としては
強精強壮作用の他に、健胃、整腸作用です。
ニンニクに含まれるアリインがビタミンB1と結合して活性型ビタミンB1を作り出すことはよく知られています。
 アメリカと中国の共同研究(1989年)でニンニクに対する疫学調査が行われニンニクの摂取量に逆比例して
消化器癌の発症が減少することが明らかになっています。
 また、日本と中国の共同研究(1999年)でニンニク、ニラ、ネギ、ラッキョウ、タマネギ(アリュウム属植物という)等の有用性を調べた疫学調査があります。中国の消化器癌の発症頻度が高い地域として江蘇省の揚中市が選ばれ、アリュウム属植物野菜を「週1回食べる」および「月1回以下しか食べない」人達に分け比較したところ、「週1回食べる」人達の消化器癌発症は3分の1であることが明らかになりました。
 日本ではニンニクエキスが強壮薬として、植物性エキスの中で唯一の医薬品として認められています。一方ヨーロッパでは抗アテローム性動脈硬化薬、抗血栓薬として臨床適用されています。